環境と人にやさしい医療機器

株式会社ライトニックス

事業内容

株式会社ライトニックスは、蚊の針を模倣した世界初の植物性樹脂針の開発、製造、販売を行っております。

「注射針は金属製である。」それは金属製の注射針が開発されて以来、医療業界の常識でした。当社は2002年に「環境と人にやさしい医療機器の開発」を目指して設立され、10年の研究・開発研究を経て、世界初の植物生まれの樹脂製ランセット針を完成させました。樹脂製だからこそ実現できる蚊の針を模倣した構造により、針と皮膚組織の接触面積が小さいことで傷口が小さく、穿刺による痛みの少ない設計になっています。厚生省の承認を受け、材料からすべてMade in Japanのランセット針の販売を開始しております。

現在は、これまで培った安全・安心な針に関する知見を活かし、開発途上国におけるワクチン接種率向上を目指した簡単に使用できる樹脂製ワクチン投与デバイスの開発を進めております。多くの方がより健康を保てる環境づくりに貢献してまいります。

マネジメントインタビュー

福田萠
創業者・取締役(営業本部管掌)

会社設立までの経緯

「抜かずに患部にとどまり、薬剤が浸透する注射針」ができないか―
株式会社ライトニックスの創業者で現会長の父は、会社設立前にそのようなことを毎日考えていたそうです。父は、医薬品会社で30年近くMRやプロダクトマネージャーを務めた後、医療機器メーカーに転職し、内視鏡等の販売に携わっていました。内視鏡を利用した手術では薬剤を入れるために長い管をつけた針を体内に刺すことがあるそうです。その針を抜く際に、薬剤が漏れて腹膜炎になる事例があることを知った父は、問題意識を抱くようになりました。そして「溶ける縫合糸があるのだから、抜かずに患部にとどめることのできる溶ける注射針があってもいい。その注射針に薬剤を包むことにより、患部に薬剤を浸透させることが出来るのではないか。」という考えに至ったのです。それは、長年使用されてきた金属製注射針の素材を生分解性樹脂に変える、という新しく壮大な発想でした。その想いを実現させるため2002年に独立し、会社を設立しました。

会社設立後の日々

当初、金属製の針と同様の形状で樹脂製の針を製作しました。ところが、同じ形状をしていても全く皮膚に刺さりません。どのような形状であれば刺さるのか―試行錯誤の日々が続く中で、自然界ではバラの棘、蜂の針、蚊の針など金属製でなくとも皮膚に刺さるものがあることに気がつき、それらの中でも痛みがない「蚊の針」を注射針に活かせないかという発想に至りました。研究を行っていくと蚊の針は注射針のような円筒形ではなく、左右がギザギザになった板状であることが分かり、その形状を模倣することで皮膚に刺さる樹脂製の針の作製に成功したのです。しかし医療機器としての安全性の確立などに非常に苦労し、製品の販売にいたるまでには会社設立から約10年間とういう年月が経っていました。それが現在、弊社の主力製品であるピンニックス®ライトです。

入社後の日々

私は2012年に株式会社ライトニックスに入社しました。民間の大手企業に勤務をしていましたが、長年、父が苦労し、開発を行ってきた製品が完成したのをきっかけに、今後の販売拡大のために株式会社ライトニックスへの入社を決めました。製品のコンセプトには非常に共感するものがありましたし、今後の樹脂製針の需要はますます広がってゆくと確信したためです。

入社当初の2012年は、医療機器としてピンニックス®ライトの薬事申請を行った直後であり、承認が下りるまで2年ほどの見込みでした。量産体制はその承認までの2年間に整える予定でしたが、申請に必要なデータを戦略的かつ緻密に積み上げていたことから、わずか半年という短期間で承認を得ることができました。承認が下りた際には嬉しい反面、量産体制が整っていないままの販売開始となり日々落ち着かなかったことを覚えています。

販売当初、現場では「樹脂製の針が本当に刺さるのか?」という半信半疑の声も多く、注射器の針は金属であるという固定観念を崩すことの難しさを痛感しました。

しかし、2015年には「Japan Venture Awards2015」中小企業庁長官賞、2016年には平成 28年度全国発明賞 21世紀発明奨励賞、また今年は第29回中小企業優秀新技術・新製品賞優良賞などを受賞いたしました。長年の苦労が報われる気持ちであると同時に、少しずつではありますが世の中に樹脂製針の良さへの理解が深まってきていると感じています。

今後の事業展開

私たちの夢は採血専用の針「ピンニックス®ライト」の販売にとどまらず、本来の注射器のように用途を増やし樹脂製針を普及させていくことです。

現製品のピンニックス®ライトはランセット針(注1)と呼ばれる微量採血用の針です。針を樹脂製にしたことで金属アレルギーの方でも利用できますし、蚊の針を模倣することにより金属製の針と比較すると傷の大きさを小さくすることが可能となっています。さらに医療事故防止の観点から、複数回使用を防ぐロック機能の搭載、製品の個別包装と完全密封による滅菌、全品検査による品質保証を行っています。また樹脂製であることから焼却処分することも可能となっており、使用後の感染問題、医療廃棄物問題にも配慮しています。

また、私たちがこれまで培った安全・安心な針に関する知見を通して世界中の多くの方々が健康を保てる環境づくりのため、簡単に使用できる樹脂製ワクチン投与デバイスの開発を進めております。これは開発途上国における医療インフラ不足、ワクチンが高価であることなどにより感染症などのワクチン接種が十分でないことから、特別な訓練が不要かつ安全安価に使用できるワクチン投与デバイスにより開発途上国の死亡率を下げることを目指し開発を開始いたしました。

弊社がこれまで蓄積してきた知見を活かし、使用するすべての方へ安全・安心をモットーに採血用針、薬剤を体内に入れる針、体内においてくる針、樹脂製投与デバイスなど様々な用途の樹脂製針の開発を今後も行っていきます。樹脂製針やデバイスにより注射や検査への抵抗感を和らげ、世界中の多くの方がより健康を保てる環境づくりに貢献してまいります。

(注1)ランセット針:皮膚穿刺用針、主な用途は糖尿病患者の血糖値検査用の採血

UMI担当者コメント

主として法務・知財戦略、知財管理についてサポートしております。
当社が開発する樹脂製の皮内投与デバイスは、ワクチン投与量を大幅に削減できる可能性のある画期的な商品です。当社の事業をスケールさせていくためには日本のみならず海外での特許出願・権利取得が必要であり、弁理士として知財戦略の設計、確実な権利確保のための実務サポートを行っております。

土屋亮

ディレクター