We enable sustainability

Andes Ag, Inc.

事業概要

Andesは、農業に有益な微生物を活用して大気中のCO₂を回収し、安定した炭酸塩鉱物として土壌中に長期固定する気候テック企業です。固定化したCO₂はカーボンクレジットとして認証され、ボランタリーカーボン市場で販売することが可能です。

Andesが独自に開発した植物成長促進細菌(Bacillus属)は、作物の根に定着し、土壌中での炭素鉱化プロセスを促進することで、CO₂の長期的な固定化を実現します。これらの微生物は既存の種子コーティング技術や一般的な施肥方法を通じて利用できるため、農家は従来の営農方法を変えることなく導入できます。

回収・固定されたCO₂量は独立した第三者機関によって測定・検証され、その成果はカーボンクレジットとして企業などへ販売することで収益化されます。また、本技術は炭素除去に加え、作物の生産性向上にも寄与するため、農家は収量増加とカーボンクレジットによる追加収入の双方のメリットを得ることができます。

Andesは、世界中の農地を「炭素除去のための巨大な工場」へと変革し、低コストかつ拡張性の高いCO₂除去ソリューションの社会実装を加速させることを目指しています。

マネジメントインタビュー

Gonzalo Fuenzalida-Meriz
CEO, Co-founder

会社設立経緯

Andesは、私Gonzalo Fuenzalida-MerizとTania Timmermannが共同創業した会社です。その着想の原点は、私とチリを代表する微生物学者であるBernardo González教授との対話にあります。TaniaはかつてGonzález教授の研究室に所属し、同教授の指導のもとで研究を行っていました。

対話の中でGonzález教授は、私たちが知る生命は微生物によって形作られてきたことを説明しました。微生物は植物や動物、人類が誕生するはるか以前の約35億年前から地球上に存在しており、土壌小さじ1杯の中には最大10億個もの細菌と数万種に及ぶ微生物が生息しています。こうした微生物は、生物の健康や進化を促進する一方で、衰退や絶滅を引き起こす可能性も持つなど、生態系全体に大きな影響を与える存在です。

このシンプルでありながら強力な洞察をきっかけとして、私とTaniaは、農業分野において有益な微生物を活用し、生産性の向上と環境負荷の低減の両立を目指す取り組みを開始しました。

その可能性は極めて大きいものです。地球の土壌には、大気と植生を合わせた量を上回る炭素が蓄積されており、その量は地表から深さ2メートル以内だけでも約2.5兆トンにのぼります。また、世界の農地面積は約48億ヘクタールに達します。

Andesは、微生物、植物、土壌の相互作用に関する研究を重ねることで知見を深め、現在では農地を活用した大規模な二酸化炭素除去(CDR: Carbon Dioxide Removal)を実現する微生物技術分野のグローバルリーダーへと成長しています。

設立後の日々

Andesの創業初期は、研究開発に注力した期間でした。私たちは有用な微生物を探索するため、南北アメリカ各地を訪れ、植物の根や土壌サンプルを収集し、そこから微生物を分離・解析してきました。その結果、Andesは数千種類に及ぶ独自の有用微生物コレクションを構築し、その一部はすでに商業利用されています。

多くのバイオテクノロジーと同様に、微生物に関する科学的知見を実際の農業技術へと発展させるには、長年にわたる研究が必要でした。研究室での実験、温室試験、圃場試験を重ねた結果、現在では米国中西部において数年にわたり実証・検証された、農地向けの第一世代CO₂除去技術を実用化しています。

カーボンクレジットの創出には農地へのアクセスが不可欠であり、競争の激しい農業分野で農家との信頼関係を築くことは容易ではありません。そこでAndesは、農家が容易に導入・参加できるビジネスモデルを構築しました。Andesと協働する農家は、カーボンクレジットの販売による収益を得られるだけでなく、微生物処理による作物の健全な成長や収量向上の恩恵も受けることができます。

また、Andesの微生物ソリューションは、農業現場での使いやすさを重視して設計されています。種子処理として利用できるほか、既存の施肥作業と組み合わせて使用することも可能であり、農家の従来の営農プロセスに無理なく組み込むことができます。

こうして生み出されるカーボンクレジットは、高い永続性を持ち、競争力のある価格で提供できるだけでなく、大規模な展開にも適しています。Andesは、持続可能性目標の達成を目指す企業に対し、実効性の高い気候変動対策ソリューションを提供しています。

今後の事業展開

Andesは主にボランタリーカーボン市場向けに事業を展開しています。しかし、同社は炭素除去技術の基盤となるモデリング、生物学、モニタリングといった領域で継続的な技術革新を進めており、将来的にはコンプライアンス市場(規制市場)においても世界をリードする企業となることを目指しています。

コンプライアンス市場は、政府による規制のもとで創設され、高排出産業に対して参加が義務付けられる市場です。現在、カーボンクレジット市場全体の収益の大部分を占める主要な市場となっており、世界の温室効果ガス排出量の約28%が何らかの炭素価格制度の対象となっています。また、新たな国や地域で制度導入が進んでおり、その適用範囲は今後も拡大すると見込まれています。

Andesが取り組む技術革新は、CO₂除去のコストを大幅に引き下げるとともに、大規模かつ迅速な展開を可能にします。これにより、高い信頼性を持つCO₂除去量を効率的に創出し、拡大する市場ニーズに応えることが可能になります。

Andesは、企業だけでなく各国政府にとっても信頼できるパートナーとなることを目指しており、Scope 1、Scope 2、Scope 3のすべての排出量に対応するソリューションの提供を視野に入れています。

Scope 1は企業が所有・管理する設備などから直接排出される温室効果ガス、Scope 2は購入した電力や熱などの利用に伴う間接排出、Scope 3はサプライチェーン全体で発生するその他の間接排出を指します。特にScope 3は企業全体の排出量の約90%を占めることが多く、脱炭素に向けた最大の課題であると同時に、最も大きな改善機会でもあります。

世界的に気候変動関連の規制強化が進み、企業に対してScope 1からScope 3までを含む包括的な排出量削減が求められる中、Andesの自然由来かつ拡張性の高いCO₂除去ソリューションは、こうしたニーズに応える有力な選択肢となることを目指しています。

UMI担当者コメント

Andes社の担当として、事業成長を支援しております。同社は、独自の微生物プラットフォームを活用し、農地を炭素除去の場へと転換することで、大気中のCO₂を土壌中に長期固定化し、カーボンクレジットを創出するクライメートテック企業です。既存の農業オペレーションに導入できるため、高い拡張性を有しており、農業分野における脱炭素化の実現に貢献しています。世界規模での炭素除去と持続可能な農業の両立を可能にする革新的なソリューションとして、今後のさらなる成長を期待しています。

柴藤 祐介

プリンシパル