安価、安全、低環境負荷でのコモディティー化学品の製造を実現!

Chemetry Corp

事業概要

Chemetry社は既存のクロールアルカリにおける消費電力を大幅に削減できる新規技術を提案しています。既にパイロットプラントでの安定運転が確認できており、現在Braskemとの協力によりブラジルのBraskem工場内でデモプラントの建設を進めています。

当社の技術は、塩の電気分解でカ性ソーダと塩化銅(CuCl2)を生成し、CuCl2から二塩化エチレン(EDC)、苛性ソーダ、水素を得るのが特徴であり、既存のイオン交換膜法と比べ消費電力の25~50%削減が予想されます。これらの消費電力の削減は、EDCを原料としたPVCの製造販売、基礎化学品の苛性ソーダの製造販売を行っているクロールアルカリメーカにおける製造コスト削減に繋がり、今後製品ポートフォリオ構築にも貢献できると期待します。

マネージメントインタビュー

Ron Birkhoff
CEO

会社設立経緯

Chemetryは、2007年にCO2セメント技術を開発するために設立されたCalera Corp.の後継会社です。2008年、このセメントプロセスにアルカリ性原料を供給するプロセス技術を研究開発するため、Calera Corp.内にアカデミアの専門家と研究チームが設立され、その結果、現在eShuttle®としてブランド化されている新しい電気化学のプロセスが開発されました。

塩化銅Shuttleを使用するEDC用のeShuttleは、従来のクロールアルカリにおけるPVC製造プロセスの大幅な改善が確認できました。2016年、Calera Corp.はChemetry社に社名を変更し、それ以来、同社は化学品に焦点を移し、より効率的で環境に優しく、より安全な方法で化学品が製造できる技術の開発と商業化を進めています。

2021年、Verdagy Corp.がChemetry社からスピンオフして設立され、独自の電気化学プラットフォーム技術に基づき、効率的なグリーン水素製造のためのAEM電解に注力しています。

設立後の日々

EDC技術は2012年から2016年の間にカリフォルニア州モスランディングで開発されており、実験室からパイロットプラントまでの実証が完了しております。また、2016年にはTechnip Energiesとプロセスエンジニアリングとプロセスの商業化で協力する契約を締結するまでに開発が進んております。その直後、Braskem社と触媒プロセスと完全に統合された商業規模の電解槽セル10基を含むデモプラントでの実証プロジェクトの契約を締結しました。2021年からはBraskemでのデモプラントのモジュールユニットをカナダで製造開始し、2022年に完成しました。このモジュールユニットは2023年春にブラジルに輸送され、現在はBraskems社内PVC製造施設に設置され、2024年の設置・稼動に向けて準備が進められています。

Chemetryは長年にわたり、日本の三菱商事とUMI、電気化学セルの製造社であるスウェーデンのPermascand社などと戦略的パートナーや投資家からなる強力なチームを築いてきました。これらのパートナーシップにより、私たちは新規技術の実証段階を早期に完了し、より早く化学業界に自社のeShuttleを提供することが可能になりました。

今後の事業展開

今後数年間は、実証段階を終了し、産業界の顧客と協力してEDC技術の商業プロジェクトを開発することに主眼を置きます。新規プラントのほか、既存のクロールアルカリおよびEDC製造プラントおいて当社技術の高効率性によりコモディティー化学品における価格競争力が期待できます。

また、2019年には、臭化銅Shuttle技術を用いてPO(酸化プロピレン)を製造する新規プロセスの開発を始めました。このプロセスはeShuttle EDC技術のコンセプトを活用したものであり、エネルギーと環境への影響を抑えた新規電気化学プロセスです。

UMI担当者コメント

当社はクロールアルカリにおける新規プロセスを提案しております。これまでのクロールアルカリは、グリーン水素を中心に分離膜、電極など材料の改善による高効率プロセスが多く発表されてきました。一方、PVCの原料のEDC及び苛性ソーダを中心としたコモディティー化学品は、水素と同様なクロールアルカリプロセスにより生産されるが、これまで製造プロセスにける大きなイノベーションはなく数十年前に確立された製造プロセスでの製造が主流でした。ただし、当社はこれらのようなコモディティー化学品の低コストでの製造を実現可能な新規クロールアルカリのプロセスを提案しております。

クロールアルカリにおけるグリーン水素製造の普及には、製造プロセスの改善以外にもサプライチェーン構築などのインフラ設備に莫大な資金が必要でございますが、当社が注目しているクロールアルカリにおけるEDC、苛性ソーダの需要は顕在しており、既存クロールアルカリメーカにとっては高い収益源となっております。従って、本領域でのコスト削減が可能な当社のプロセスはクロールアルカリ業界に与えるインパクトが高いと期待できます。

沈相勲

プリンシパル