単結晶薄膜による次世代MEMSへの挑戦

アドバンスト マテリアル テクノロジーズ株式会社

事業内容

当社はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の単結晶薄膜の量産化に成功し、飛躍的な性能向上をもたらす革新的な素材技術を開発しました。PZTは電気を流すと伸び縮みして動く圧電材料で、MEMS(Micro-ElectroMechanical System)という微細デバイスで使われます。これまでは結晶粒がランダムにつながった多結晶しか作れませんでしたが、当社の単結晶技術によってIoT社会で必須のセンサーの精度が高くなったり、モーターより小型・高精細な動きが期待されるアクチュエータの出力が上がったりします。例えば、市場が急拡大している3Dプリンターでは通常よりも粘度の高い樹脂が使われるためよりパワフルなインクジェットヘッドが必要となります。当社の単結晶材料によってハイパワーで耐久性のあるタフなインクジェットヘッドを開発中しています。他にも、自動運転車の目として使われるライダーの駆動部、匂いセンサー、超音波センサー、高性能スピーカー・マイクロフォンと応用先は多岐にわたります。当社は多くのパートナー企業様と協働しながら、単結晶薄膜技術によって次世代MEMS市場をリードすべく日々研究開発を続けています。

マネジメントインタビュー

山口十一郎
代表取締役兼CEO

入社の経緯

エンジニアとして日本の鉄鋼会社に入社し、約10年間勤務しました。この間米国に留学しました。その後、米欧の外資系会社に約24年勤務、外資系会社の日本、アジア法人社長を務めました。その後、2014年から2018年まで、ファンド傘下のメーカーの社長・会長を務めましたが、キャリアの総仕上げとして何かやりたいという気持ちが強くありました。その時、30年以上の長い付き合いのある大先輩から、UMIを紹介され、その設立の趣旨に大いに賛同しました。そうした経緯から、UMI傘下の当社への入社を決断したのですが、その先輩の言葉は、『日本の製造業の将来のために、本当に役立つことをやれ』ということでした。

入社後の日々

弊社はMEMS(Micro Electrical Mechanical System)というデバイスの製造販売を行っています。その中でも独自技術により開発製造された単結晶という構造によりもたらされる様々な特徴(電気的、機械的、耐環境性能など)を差別化の基本要件としています。

事業立ち上げに当たっての律速は、顧客へのコンタクトから最終的な採用決定に至る時間です。現行品に対する性能の優位性について、顧客におけるサンプル評価により確認した後、試作による量産性の検討を経て、仕様の決定・価格交渉にいたりますが、ここに年単位の時間がかかるのがもどかしいところです。

しかし、先述の性能上の優位性があるため、様々な用途への展開が着実に進行中です。インクジェットプリンター、スピーカー、ジャイロ、超音波機器、各種センサー等々、国内外の顧客において着々と検討が進められている状況です。

今後の事業展開

1.有望な市場への浸透、展開
1)インクジェットプリンター
MEMSはプリンターヘッド部分に使用されるが、当社においては、ヘッド部分の設計能力があり、顧客の求めに応じて、当社MEMSを用いた場合のヘッド設計を行っています。事業展開において、デバイス販売のみならず、設計開発を行うことで、顧客にとって不可欠の存在となります。さらに、こうした設計ノウハウを独自ツールと位置づけ、他顧客に対する水平展開を図っています。

2)スピーカー
現在高性能スピーカーへのSpec inの最終段階であるが、アコースティック性能要求が非常に高いため、当社単結晶でなければ適合しないということは勿論ですが、顧客におけるプロセス条件についても、当社からアドバイスを行っています。デバイスの販売のみならず、関連技術も含むコンサルティングを行うことで、顧客からの信頼を得ることを目指しています。加えて、この種のノウハウ蓄積により、他顧客向けに水平展開することを目指しています。

2.開発の強化と権利化
当社の単結晶技術を生かして、将来の各種デバイス開発に活用すべく、社内R&Dに注力しています。具体的には、‘非鉛’をキーワードとして、各種材料の単結晶化、性能評価を行い、様々な用途に適用しうる単結晶材料の開発・権利化を目指します。

UMI担当者コメント

投資直後は、財務会計・管理会計の体制構築を中心にバックオフィスのサポートや、会議体の運営や規程見直し等、会社運営を健全に行うための支援を実施しました。
現在は社外取締役として会議体への出席や、マネジメントを含む会社メンバーとのコミュニケーションを通じて、会社状況の把握及び改善提案・指導等を実施しています。

谷博史

カウンシル 公認会計士・税理士